醜い顔から美しい顔へ。「奈落の底」から這い上がる執念の漫画『累(かさね)』レビュー

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漫画『累(かさね)』は既刊9巻の連載作品です。この漫画はストーリー展開がとてもよく練られていて、片時も飽きさせない工夫が随所に見られており、とても面白いです。

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特に目を見張るのは物語の「設定」ですね。ありきたりではない人生を歩んできた登場人物たちがどのような行動をするのか。

ハラハラどきどきの興奮が味わえるかと思います。ネタバレも含みますが、物語の冒頭のあらすじを紹介していきたいと思います。

 

冒頭のあらすじ

主人公の母は「伝説の女優」と呼ばれるほど、鬼気迫り卓越した演技力を持ち、あっと驚くような美貌を持っていました。

 母は美しいまま、娘を一人残し亡くなってしまいます。

 

娘の「淵 累(ふちかさね)」は、醜い顔で生まれ、いじめや嫌がらせを受けたり周囲の好奇の目にさらされていました。

 大女優の娘であるのにもかかわらず「累」は母のような美人ではなく、気味の悪い醜い外見なのでした。

 

そんな中、学校でいじめを受けていた「累」は、学芸会で主役のシンデレラを演じることに決まります。それもクラスメイトの「悪意」によって・・・。

 醜い顔で主役を演じることに抵抗を感じながらも、「伝説の女優の娘」である誇りをかけて、ひたすらに練習します。姿は醜くても、上手に演技できたなら少しは見直してくれるかもしれない、という淡い期待を抱きながら。

 

孤独に練習に励む毎日。その間もいじめは続いていました。

「累」はふと母の言葉を思い出します。

「かさねちゃんが本当に本当に本当に辛いときは……、ママの鏡の引き出しの中の“赤い口紅”を……」

 

そして学芸会本番、シンデレラの劇は始まりました。

 練習のかいもあり、目を見張るほどの演技力で観客やクラスメイトでさえも驚かせました。
「あのさ、淵の演技すごくない?」
「でも淵さんだよ?」
「あんなだけど結構がんばってたよね……」

このような囁きが聞こえてくる中、「累」の頑張りをぶち壊そうとする少女がひとりいました。

クラスのリーダー的存在で、美少女の「西沢イチカ」です。

 

イチカは「累」を主役から降ろし、自分がシンデレラ役をやることにして「累」を落とし入れる嫌がらせを仕掛けてきました。

クラスのみんなや、「王子様」役の生徒までもが「イチカ」がシンデレラをやった方がいいという意見になり、「累」は主役を降りざるを得ませんでした。

 

 どんなに頑張っても、醜い顔のせいで奈落の底に落ちてしまう。その時、また母の言葉を思い出します。

「口紅を塗って、あなたのほしいものにくちづけを」

 「累」はイチカに無理矢理口づけしました。そしてなんと、二人の顔が入れ替わったのです。

慌てふためくイチカをよそに、「累」は美しい顔で舞台に立ち、シンデレラを熱演しました。

 

そこでは、醜い顔の時にはありえなかった、美しい者を賞賛する視線を向けられます。

身を焦がすほどの快感を感じつつ、大歓声ののちにシンデレラは終幕しました。

その後、醜い顔のイチカと話しましたが、建物の屋上で言い争いになりイチカは建物から転落してしまい亡くなってしまいます。

「累」は怖くなって逃げ帰り、イチカが死んだ翌日には顔は元通りに醜くなっていました。

この日の出来事をきっかけに、「累」は女優を志し、他人の顔で成功する修羅の道を突き進んでいくことになるのです。f:id:hiroaki-ootaki-8-24:20161220093741j:plain

『累』の見所を解説!

 

「魔法の口紅」を巡る奇抜な設定が光る漫画ですが、登場人物の心をリアルに書き表していて自然に作品の世界に入っていけます。醜い顔で生まれた「累」の葛藤、その劣等感を払拭するための執念でのし上がっていきます。

 

この記事で書いたあらすじはほんの冒頭で、これからまたさらに面白くなっていきます。「演劇部の先輩」、「演技力のない絶世の美女」などなど、スケールアップして物語は展開していきますので、興味を持たれた方はどうか読んでみてください。